現場の課題から、新しい調査手法をつくる
AGSは、調査の現場で直面した課題を、自社の研究開発で解決してきました。ここでは、現在取り組んでいる4つの研究開発テーマをご紹介します。
既存の手法では、時間も費用もかかる調査がありました
研究開発の出発点は、発注者の皆さまが抱える次のような課題です。
浅い海の地層探査
大型船が入れない浅い海域では、海底下の地層を面で調べることが難しく、費用もかさみます。
河床・護岸の水中点検
河床の洗掘や護岸の水中部の傷みは、岸からの目視では確認できません。
船体検査の負担
船底の状態を確かめるには、入渠(船をドックに入れること)か潜水士の作業が必要でした。
災害直後の状況把握
豪雨や高潮の後は、被災状況をすぐに把握し、復旧に着手する必要があります。
4つの研究開発テーマ
各テーマを、解決する課題と活用される調査に分けてご紹介します。
浅海用音波探査システム
浅い海の地層を、小型船と少人数で探査する
音波探査(船から音を出し、地層からの跳ね返りで海底下の構造を調べる方法)は、大型船と大がかりな機材を使うのが一般的でした。AGSは、浅い海域に特化した小型のシステムを開発しました。
技術のポイント
- 小型・軽量の震源(音を出す装置)を船の舷側(側面)に固定します。比較的短いストリーマケーブル(音を受け取るセンサーを並べ、船で引くケーブル)を使います。
- システム全体が小さいため、小型トラックで運べます。小型船舶と4名程度で運用でき、調査費用を抑えられます。
- 大型船が入れない港湾区域でも探査できます。沖合から港内まで、同じシステムで調べられます。
- 震源には爆発を使わない小型の水中スピーカーを使います。作業の安全性を高め、生物や漁業への影響の低減を図ります。
主な仕様
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発振周波数 | 200~1,600Hz(探査環境に合わせて波形を設定) |
| 分解能 | 鉛直方向 0.5~1m/水平方向 1m |
| 震源 | 小型水中スピーカー(非爆破型)、舷側に固定 |
| 位置の取得 | GNSS(衛星測位)を搭載した独自の曳航ブイを併用 |
| 使用船舶 | 小型船舶(19t未満) |
| 運用人数・運搬 | 4名程度/小型トラックで運搬 |
組み合わせる調査
| 手順 | 手法 | 分かること |
|---|---|---|
| 1 | 浅海用音波探査 | 調査区域全体の地層構造(地層断面図) |
| 2 | 海底着座型小型CPT装置(コーンを地盤に押し込み、抵抗を測る装置) | 地盤の強度、土質の判別、液状化の判定(数値データ) |
| 3 | バイブロコアラ(振動で筒を打ち込み、地層を採取する装置) | 土質の判別、物理試験(採取した試料) |
活用される調査
関連特許:特許第7014386号(震源ユニット)・特許第6966825号
関連ページ:洋上風力・海洋再エネ開発 / バイブロコアラ / 海底着座型小型CPT装置
浅海用音波探査システムの構成
地層断面図の例
自律航行型水中3次元計測システム(ASV)水馬(ミズーマ)
河床の形と護岸の傷みを、無人ボート1台で点検する
ASV(自律航行型水上艇:設定した測線を自動で走る無人ボート)に複数の計測機器を載せ、河床と護岸をまとめて点検する研究です。
技術のポイント
- ラジコン操作と自律航行の両方ができる河川点検ロボットを、計測の土台にしています。
- スワス音響測深機(扇状に音波を出し、帯状に水深を測る装置)で、河床の深掘れ・洗掘・形状・深さを面で計測します。
- 水中音響カメラ(音波で水中を映像化するカメラ)で、護岸の水中部の状態を確認します。
- ステレオ写真測量機器(2台のカメラの写真から立体形状を測る機器)で、護岸の水面より上の部分を記録します。
活用される調査
関連ページ:水馬(ミズーマ)機材紹介 / インフラ老朽化・維持管理 / 河川調査
計測の様子を動画で見る(YouTube)河川点検ロボットと搭載機器の構成
船体検査システム
入渠せず、潜水士に頼らずに船底を検査する
船を岸壁に係留したまま、水中音響カメラ(ARIS)で船底の付着物(藻類や貝殻など)の状況を調べるシステムです。音波で映像化するため、水が濁っていても検査できます。
目指す効果
- 費用の削減:年次検査の費用や、修繕箇所の発見の遅れによる費用をまとめて抑えます。
- 作業事故のリスク削減:濁った水の中での潜水作業を減らします。
- 稼働率の向上:適切な時期に整備し、船が動かせない日数を短くします。
- 温室効果ガスの削減:付着物は航行時の抵抗を増やし、燃料と排出ガスを増やします。状況を把握し、除去の判断に役立てます。
活用される場面
| 用途 | 内容 |
|---|---|
| 船体検査 | 付着物の量の確認、損傷・劣化の確認、運航への影響の推定、計測データの蓄積による船体の履歴管理 |
| 爆発物対策 | ARISを載せたROV(遠隔操作型の水中ロボット)、またはARISを携行した潜水士が、船体に取り付けられた爆発物を探知。視界が悪いときや近づきにくいときに有効です。 |
| 海洋生物の越境移動対策 | 入港前に海上で検査し、付着物を除去するかを判断 |
| 水中構造物の点検 | 河川の護岸などを概査し、詳細調査が必要な箇所を特定 |
関連ページ:インフラ老朽化・維持管理 / 港湾・沿岸調査 / 水中音響カメラ(ARIS)
係留したままの船体検査
ARISで撮影した船底の付着物
次世代に向けた5Gによる水中・陸上部画像リアルタイム伝送ロボットシステム(双方向通信システム)
空・岸・水中の画像をその場で共有し、被災状況を早くつかむ
台風やゲリラ豪雨による河川の氾濫や高潮の被害は、規模が大きくなっています。早い復旧には、被災状況をすぐに把握することが欠かせません。
技術のポイント
- 空中写真、沿岸の画像、水中の画像、測深(水深の計測)の画像を、5G(第5世代移動通信)でリアルタイムに確認できます。
- 空・岸・水中の画像を3次元的に重ねて見ることで、被災状況を詳しく把握できます。
- ASV(自律航行ボート)を小型化し、従来の調査船が入れない狭い場所、浅瀬、空洞の中でも調査できます。
- 360°カメラで、水面からの視点の映像を記録します。
活用される調査
関連ページ:災害対応・防災データ整備 / 河川調査 / 港湾・沿岸調査
リアルタイム画像伝送システムの概要
小型ASVと伝送画面の例
どの調査で研究開発の成果が活きるか
課題別・調査別のページから、関連する研究開発テーマをたどれます。
| 課題・調査 | 関連する研究開発テーマ |
|---|---|
| 洋上風力・海洋再エネ開発 | 浅海用音波探査システム |
| 海底インフラ構築 | 浅海用音波探査システム |
| インフラ老朽化・維持管理 | 河川点検ロボット(水馬)/船体検査システム |
| 災害対応・防災データ整備 | 5Gリアルタイム画像伝送/河川点検ロボット(水馬) |
| 港湾・沿岸調査 | 浅海用音波探査システム/船体検査システム |
| 河川調査 | 河川点検ロボット(水馬)/5Gリアルタイム画像伝送 |
研究開発の成果を、特許として権利化
浅海用音波探査システムの開発で生まれた技術は、特許として登録されています。AGSが保有する特許の全体は、保有特許ページでご覧いただけます。
| 特許番号 | 発明の名称 | 関連テーマ |
|---|---|---|
| 特許第7014386号 | 震源ユニット及び海底地質探査システム | 浅海用音波探査システム |
| 特許第6966825号 | 深度保持部材、深度保持ユニット、及び海底地質探査システム | 浅海用音波探査システム |
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