自律航行型水中3次元計測システム(ASV)

人も船も近づきにくい水域の地形を、無人で3次元計測する

水馬(ミズーマ)は、マルチビーム測深機を積んだ双胴船型の無人ボートです。人が乗らずに水面を走り、水底の形を3次元データで記録します。有人の測量船では危険な場所や、船を降ろせない小さな水域の調査に使います。

危険な場所に人を乗せられない

急斜面の直下や構造物の際(きわ)は、有人船では近づくこと自体がリスクになります。調査員が岸に残ったまま計測できる手段が求められます。

出水後の洗掘・堆積を早くつかみたい

洪水のあとは、橋脚まわりの洗掘(流れで川底がえぐられること)や土砂の堆積を早く把握する必要があります。点ではなく面で測れれば、見落としが減ります。

搬入路が狭く、測量船を降ろせない

山間のダム湖や中小河川では、クレーンやスロープが使えない現場も少なくありません。人力で運び込める小型の計測船があれば、調査の段取りが軽くなります。

自律航行型水中3次元計測システム(ASV)水馬(ミズーマ)

ASV(Autonomous Surface Vehicle:自律航行型水上艇)は、あらかじめ設定した測線を自動で走る無人ボートです。水馬はその船体に、扇状に音波を出して帯状に水底を測るマルチビーム測深機を載せています。役割は「人が入れない水域の、面的な地形計測」です。

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水馬(ミズーマ)の特長

2つの船体を並べた双胴船タイプで、自律航行と遠隔操作の両方で水中の3次元地形データを取得します。小型・軽量のため、ハイエース1台に収まり、搬入は2名で対応できます。

  • 自律航行と手動ラジコン操作を、現場で任意に切り替え可能
  • 長距離Wi-Fiでソナー(NORBIT社製 iWBMSe)を遠隔操作:最大約500m
  • ラジコンによる遠隔操作:最大約250m
  • 前方監視カメラを搭載可能:画像の伝送距離は最大約500m
  • ハイエース1台に積載でき、2名で搬入可能

主な適用対象と計測できること

河川

  • 河床の形状と深浅
  • 深掘れ・洗掘(橋脚・護岸の根元)
  • 護岸水中部まわりの地形変化

ダム湖・貯水池

  • 堆砂(ダム湖に溜まる土砂)の分布
  • 取水設備・放流設備まわりの地形
  • 斜面直下など船で近づきにくい区域

湖沼・港湾・漁港の静穏域

  • 浅い水域の地形
  • 係留施設の前面など構造物際の地形
  • 浚渫前後の出来形確認

水馬(ミズーマ)の仕様

船体(プラットフォーム)と、搭載するマルチビーム測深機に分けて示します。

船体・運用

項目仕様
船型双胴船(カタマラン)タイプの無人ボート
航行方式自律航行/手動ラジコン操作(任意に切替)
ソナーの遠隔操作長距離Wi-Fi経由、最大約500m
ラジコン操作距離最大約250m
前方監視カメラ搭載可能(画像伝送距離 最大約500m)
運搬・搬入ハイエース1台に積載、2名で搬入
船体寸法・重量全長:約150cm 全幅:約100cm 重量:約36kg
航行速度・連続稼働時間最高速度:約3.5ノット 巡航速度:約3ノット 間欠稼働:約4時間 連続稼働:約1時間

搭載マルチビーム測深機:NORBIT社製 iWBMSe(メーカー公表値)

項目メーカー公表値
周波数400kHz(200〜700kHzで可変)
スワス角(音波を扇状に広げる角度)5〜210°で可変
ビーム数256〜512本(高密度モードで1024本)
測深レンジ0.2〜275m(400kHz使用時の標準は160m)
距離分解能6mm未満
ビーム幅0.9°×1.9°(400kHz、標準仕様)
統合測位・姿勢センサーGNSS支援型慣性航法装置を内蔵
水平 ±(8mm+1ppm×基準局からの距離)/鉛直 ±(15mm+1ppm×基準局からの距離)
出力データ水深、後方散乱強度、サイドスキャン画像、ウォーターカラム(水中の反射)など
重量6.5kg(空中、ブラケット込み)
仕様に関するご注意:iWBMSeの値は、NORBIT社の製品仕様書(PS-150006-16)に記載されたソナー単体の公表値です。実際の測深精度は、船体の揺れ、水中の音速、測位の条件によって変わります。マルチビーム測深機そのものの解説は マルチビーム測深機 iWBMSe のページ をご覧ください。

調査の進め方

1
事前協議

調査目的、範囲、必要な成果品を伺います。過去の測量成果があれば、比較方法もこの段階で決めます。

2
現地確認

搬入経路、投入できる岸、通信の見通し、流れや水草の状況を確認します。ASVが向くかどうかもここで判断します。

3
計画・手続き

測線、作業時間、中止基準を計画書にまとめます。河川・ダム管理者や漁協との調整が必要な場合は事前に行います。

4
現地計測

機器の取付け誤差を補正する校正(パッチテスト)と音速の測定を行ったうえで、測線に沿って自律航行で計測します。

5
解析

ノイズを除去し、点群(位置と水深をもつ点の集まり)を作成します。地形図、断面図、前回との差分図にまとめます。

6
報告・納品

成果図と報告書を納品します。計測できなかった範囲は補間で埋めず、図面上に明示します。

調査可能な条件・制約

ASVは万能ではありません。向く条件と向かない条件を先にお伝えし、必要に応じて他の手法と組み合わせます。

適する対象・目的

  • 有人船では危険な急斜面直下・構造物際の地形計測
  • 搬入路が狭く、測量船を降ろせない中小水域
  • 濁った水域の地形計測(音波で測るため、水の透明度に左右されにくい)
  • 洗掘・堆積・堆砂の面的な把握と、前回成果との比較
  • 出水後など、短い準備期間で計測したい場面

適用しにくい条件

  • 流れが速い区間や、強風・波浪がある水面
  • 船体の喫水より浅い場所や、水面から出ている干出部
  • 水草・流木・浮遊ごみが多く、航行が妨げられる水域
  • 操縦・通信の範囲(最大約250〜500m)を超える区域。地形や構造物で見通しが遮られると、到達距離は短くなります
  • 橋の下など、衛星測位の電波が遮られる場所(位置精度が下がります)
  • コンクリートのひび割れや劣化など、構造物表面の目視確認
  • 川底の下の地層の厚さや内部の構造
条件に応じて、次の手法を組み合わせます。水深の浅い区域や陸上部は UAV搭載グリーンレーザー(Edge LiDAR)、構造物の状態確認は 水中音響カメラ(ARIS)や潜水士による目視、川底の下の地層はサブボトムプロファイラー(音波で地層を探る装置)で調べます。

成果品

お渡しするのは、補修の優先順位や浚渫量の判断に使える図面とデータです。

  • 3次元点群データ(水底の形状を点の集まりで記録したもの)
  • 等深線図・段彩図(深さを線や色で表した平面図)
  • 横断図・縦断図(任意の位置で切った断面図)
  • 前回成果との差分図と、洗掘量・堆積量の数値
  • 堆砂量の算定結果(ダム湖・貯水池の場合)
  • 後方散乱画像(水底の硬さ・粗さの違いを濃淡で示す画像)
  • 計測範囲・欠測範囲を明示した報告書

無人でも、計測の品質と安全は人が管理する

安全管理

調査員は岸から操作し、水上には人が出ません。計画書で風・流れ・視程の中止基準を定めます。

精度管理

計測前に校正(パッチテスト)を行い、水中の音速を測って補正します。測線どうしの重なり部分で水深の差を確かめ、精度を確認します。

欠測の扱い

障害物や水深不足で測れなかった範囲は、補間で埋めずに図面上に示します。どこが実測でどこが未計測かを、成果品で区別できます。

想定される活用場面

水馬の特性が活きる典型的な場面です。

出水後の橋脚まわり

流れが残り有人船を出しにくい時期に、岸から橋脚周辺を計測。洗掘の深さと範囲を平常時の成果と比べ、補修の要否判断に使います。

ダム湖の斜面直下・取水設備前

落石のおそれがある斜面の直下や、取水設備の前面など、有人船が近づきにくい区域を無人で計測。堆砂の分布を面で把握します。

搬入制約のある中小水域

クレーンが入らないため池や山間の貯水池に、ハイエース1台・2名で搬入。測量船の手配が難しい現場で面的な地形データを得ます。

よくあるご質問

Q有人の測量船による計測と、何が違いますか。

計測の原理(マルチビーム測深)は同じです。違いは、人が乗らないため危険な区域に近づけること、小型なので搬入の制約が少ないことです。一方、広い水域を長時間計測する場合は、有人船の方が効率的なこともあります。

Q濁った水でも計測できますか。

地形の計測はできます。音波で水深を測るため、カメラと違って水の透明度にほとんど左右されません。ただし、水中に気泡や浮遊物が非常に多い場合は、データにノイズが増えることがあります。

Qどのくらい浅い場所まで測れますか。

ソナー単体の公表レンジは0.2mからですが、実際には船体の喫水と水底の状況で決まります。さらに浅い区域は、グリーンレーザーなど別の手法と組み合わせます。

Q過去の測量成果と比較できますか。

できます。過去の成果の座標系や計測方法をご提供いただければ、条件をそろえて差分図を作成します。シングルビーム(真下1点だけを測る方式)の成果との比較では、測線の間の扱いを事前にご相談します。

Q費用と工期はどう決まりますか。

主に、計測範囲の広さ、現場までの移動距離、搬入・投入の条件、必要な解析と成果品の種類で決まります。下の「ご相談時に分かる範囲でお知らせください」の項目をお知らせいただければ、概算をお出しします。

ご相談時に分かる範囲でお知らせください

調査場所(河川名・ダム名・水域名)
計測したい範囲(面積または延長)
おおよその水深と流れの状況
現場への搬入経路と、ボートを降ろせる場所
調査の目的(洗掘確認・堆砂量算定など)
必要な成果品と納品形式
希望する調査時期・納期
既往の測量成果・図面・写真の有無
「ASVが使える現場か分からない」という段階でもご相談いただけます。現場条件を伺い、ASVが向かない場合は他の手法をご提案します。

危険な水域・狭い水域の地形計測を
ご相談ください

対象水域と調査目的をもとに、水馬(ミズーマ)の適否と、他の手法との組み合わせをご提案します。既往資料があれば、お問い合わせ時に添付いただくと具体的にご案内できます。